大判例

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水戸地方裁判所 平成5年(行ウ)7号 判決

原告

山本覚一(X)

右訴訟代理人弁護士

熊谷裕夫

右訴訟復代理人弁護士

岡野謙四郎

被告

茨城県下館土地改良事務所長(Y) 片山栄三

右訴訟代理人弁護士

中井川昇一

被告指定代理人

海老原晃

高儀稔

中川清彦

竹内政夫

塩畑実

小松崎武男

江幡久

小貫正博

事実及び理由

第三争点に対する判断

二 判断

1  一時利用地指定処分と換地処分との関係

原告は、本件換地処分の違法事由として、本件土地改良事業における一時利用地指定処分における手続違反、照応原則違反等を併せて主張しているので、まず、その主張の可否について検討する。

一般に一時利用地指定処分と換地処分とは、前者が後者の前提要件をなすものではなく、別個の行政処分であるから、前者についての違法原因は、後者の取消訴訟において主張できないものといえそうである。しかし、右の点については、一時利用地指定処分の性質に応じた検討が必要である。すなわち、土地改良事業における一時利用地指定処分は、換地計画を定めないで行われる場合には、純然たる工事目的のために当該一時利用地を将来換地とすることを予定しないで指定するものと、当該一時利用地を換地予定地として指定するものに大別できる。前者の性質を有する場合には、一時利用地指定処分と換地処分とは、まったく別個の処分というべきであるから、一時利用地指定処分における違法原因を換地処分取消訴訟において主張することはできない。これに対し、後者は、土地改良事業が長期間を必要とするものであることから、関係権利者の地位を安定させるため、一時利用地を将来換地とすることを予定し、実質上換地処分がなされたと同様の使用収益関係を設定するものであり、当該処分に対する不服が照応原則、公平原則違反という実体的な理由に基づく場合には、その不服は、当該土地を換地として将来行われるべき換地処分に対する不服として表明されたものということができるのであるから、右実体的な違法事由は換地処分取消訴訟においても主張し得るものというべきである。これに対し、一時利用地指定処分についての手続的違法事由は、一時利用地指定処分と換地処分とが法律上は別個の処分であることを考えると、換地処分取消訴訟において主張できないものと解するのが相当である。

前記認定のとおり、第一回指定及び第二回指定の際には、未だ換地計画が決定されてはいなかったが、それらは右の換地予定地的な一時利用地指定処分であるということができるのであるから、照応原則、公平原則違反という実体的な違法事由は、本件換地処分取消訴訟における違法原因として主張できるが、手続的違法事由についての主張は失当である。したがって、原告主張の一時利用地指定処分に関する実体的違法事由は本件換地処分の違法事由として意味を持つことになるから、後記2において併せて検討することとする。

2  照応原則及び公平原則について

法五三条一項二号は、当該換地及び従前の土地について、それぞれその用途、地積、土性、水利、傾斜、温度その他の自然条件及び利用条件を総合的に勘案して、従前の土地に照応していることを要求している。右規定にいう換地と従前の土地との照応は、その従前地と換地とを全体として捉え、それぞれの用途、地積等の諸条件を総合勘案して、これが概ね同一であることを意味するとともに、ある特定の権利者について、他の多数の権利者との比較によると、合理的理由もないのに著しく不公平・不利益な換地をしたり、故意に不公平・不利益な換地をすることを禁じる公平の原則を含むものというべきである。換地計画作成の基礎となる通達「換地計画実施要領について」(昭和四九年七月一二日49構改B第一二三二号農林省構造改善局長通達、昭和六〇年三月一三日改正、〔証拠略〕)第二、五(二)イの規定は、まさに右公平の原則を示したものに外ならない。

そこで、本件換地処分が右照応原則及び公平原則に合致する適法なものであるかどうかを検討する。

(一)  地目について

県営水海道東部地区換地設計基準〔証拠略〕は、従前地の地目について「換地処分上は、着工直前の現況地目で処理」することとしている。その直前が地目設定の基準とされる右「着工時」の意義について、原告は、原告の所属する第四工区相野谷地区における工事着手時と主張し、これに対し、被告は、事業施行地域全体の最初の着工時と主張する。

そこで判断するに、土地改良事業には長期間を要するのが通常であるから、その間に地権者が耕作上の都合等により地目を変更する可能性がある、一方、土地改良事業においては、事業開始に当たって事業計画を定める必要があり、事業計画においては、当該土地改良事業により換地とする予定の農用地について、田、畑等の地目を区分した上で、それぞれの筆数や面積を決めなくてはならない。それは、例えば、田と畑とでは、排水路の設置の有無や土地の高低等が異なっており、事業の実施に当たっては、これらの違いを勘案した上で、あらかじめ田にすべき土地、畑にすべき土地と予定地目を想定した上で、それぞれの面積等を定めておかなければ、工事計画等に支障が生ずるからである。しかるに、こうして事業計画で定めた地目区分が、その後に耕作者の部合によって逐次変更されていくことは、当該事業の円滑な進行を妨げるおそれが多分にある。そのため、一定時点を基準として地目区分を確定させてしまうことが必要となる。右の時点をいずれとするのがより合理的かを考えると、原告の主張を採用すると、各工区ごとに着工時期が異なることになってしまうおそれがあり、当初の事業計画が変更を余儀なくされる可能性が高い。そもそも、右確定が必要な根拠は、事業計画の円滑な進行にあるのであり、当該事業計画の確定に最も近接した時期が合理的と解されるので、被告主張の時期をもって基準とするのを相当とする。

したがって、地目に関する原告の主張は採用することができない。

(二)  本件換地処分の位置選択等について

前記認定の本件換地処分の内容をみると、畑については自宅近辺に三団地、田についても二団地に集約され(他に貸付地の一団地がある。)、従前地の団地数に比べれば、耕作効率の面で利益を得ているものといえる。しかし、面積の広い従前地である本件二、六、七及び九土地周辺に換地が指定されていないこと、団地数が換地設計基準に比べれば合計六団地と多いこと(中山町所在の土地を除く。)、田について、自宅に比較的近い本件ニ土地の従前地に対する面積割合がほぼ等しいのに対し、遠方の本件ホ土地の従前地に対する面積割合が約一三一・八パーセントと大幅に増加しており、全体としてみれば、自宅から遠方に位置する農用地の割合が増加し、通作距離の面でも不利益となっていること(原告については、前記一3(二)の認定のとおり、従前地に対する換地の配分割合が約一〇七パーセントであり、本件換地処分により農用地の面積自体が増加しているが、その点を考慮に入れてもなお原告自宅から遠方に位置する農用地の面積比率が増加しているものといえる。)等の諸点を踏まえ、原告の従前地と換地との諸要素を全体的に比較検討すると、本件換地処分が原告に不利益な内容となっていることは否定できない。

さらに、本件換地処分に至るまでの経緯、他の権利者との比較などからすると、その不利益性は顕著である。すなわち、前記一1及び2で認定したように、相野谷地区内における共同墓地を巡る紛争、市議会議員選挙における対立などから原告(原告の父)らと山本幹男、荒川厳市らとが相対する立場にいたこと、第一回指定の際の換地委員長が荒川厳市、第二回指定の際の換地委員長が山本幹男であったところ、第一回指定の一時利用地の一部に原告の従前地にはなかった送電線鉄塔が設置されていただけでなく、第一回指定と第二回指定の内容を比較すると明らかに原告に不利益な内容に変更されていること、一時利用地の配分の際、換地委員会が評価委員が作成した客観的な評価資料をほとんど顧みることなく割付けを行っていること等の諸事情を総合すると、原告に対する一時利用地の配分、すなわち換地の配分が、相野谷地区内の対立をそのまま反映するような不当な意図でなされたことが推認できる。また、これに加え、前記一4で認定したように、山本幹男を始めとする換地委員会の主要な委員、山本幹男の関係者等に対する換地配分が、いずれも集団化及び位置選択の面で非常に有利な扱いを受けたことと比較すれば、原告に対する本件換地処分の不利益性は顕著であり、まさに公平の原則に違反する処分であるということができる。

3  原告は、その他いくつかの照応原則違反の事由を主張するが、以上のように、照応原則の中心的な内容といえる換地の位置選択及び公平性の点で、本件換地処分が照応原則に違反するということができるから、その余の点を判断するまでもなく、本件換地処分は違法であり、取り消されるべきものである。

(裁判長裁判官 來本笑子 裁判官 松本光一郎 坪井昌造)

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